しかしオレらふたりきりの時間は、長くは続かない。
たいていジャマが入るからである。

「小宮山あ、オレにもそれちょうだい」

冨永が嬉しそーうに椅子を引きずってよってくる。コイツは顔に似合わず甘党で、チョコ食べてると必ずまざりにくるのだ。

伸びてくる手を素早くはたき落として冨永にひとこと言ってやる。
「だあーーっめ、触んな!! これはオレのチョコ!! 食いたきゃ小宮山じゃなくてオレに頼め」
ややこしい食い方してるせいでわかりづらくなってるけど、チョコの持ち主はオレなのだ。勝手に食わせてやるわけにはいかない。

「あっそ。じゃあ加瀬くん、チョコちょうだい」
「イヤ」

冨永の顔がひきつる。
ごうごうと文句言いながら再び手え伸ばしてくる冨永に舌打ちしつつ、ヤツの手を捕まえて袋からジカにチョコを出してやる。
ある程度の量を盛ってやったのはもちろん自分のテリトリーを守るためだ。
気心知れてる冨永といえども、小宮山の手からは食ってほしくない。

「オイ。ありがとうは?」
「オマエねえ・・」

小宮山の手からまあるいチョコを一粒つまみとり、ポイと口に放り込む様子を冨永にタップリとみせつけておく。

イジリたければイジれ。気のすむまで。
何してくれたって、オレはひとつも構わない。

だってオレはーーー小宮山本人にハッキリ『好き』って言えないだけで、自分の気持ちを隠そうだなんてこれっぽっちも思っていないのだから。
今更コイツになんて思われようが、痛くも痒くもない。