「・・そう? なんかゴメンね、小宮山」
申し訳無さそうに私にそう言ってから、冨永くんはチケットを2枚とも加瀬くんに渡した。

「やった。アリガト。お礼にこれやるよ」
加瀬くんがチケットと引き換えに冨永くんに握らせたのはカラフルなグミの袋。
「オレ、グミはそんな好きじゃねんだけど・・」
「うるせーな。文句言うなよ、甘党だろが」

やや強引なお礼をすませると、ほっぺをピンクに染めた加瀬くんがくるりと私のほうへ身体を向けた。そして、今手に入れたばかりの招待券を私の手に滑り込ませて、ついでにぎゅうっと手も握る。

「小宮山、これオレといこ?」
「エ!??」
「観たいんだよな? これ」
「ウ、ウン。まあね・・」
「じゃあ明日いこ。土曜だし」
「あ、明日・・!?」

なんとなく冨永くんにチラリと視線を送ると、冨永くんは薄ら笑いを浮かべつつプイと前を向いてしまった。

その後は、加瀬くんにいつものようにゴリゴリ押し切られて、明日いきなり坂川に映画を観に行くことが決まってしまったのだった。