とはいえ、哲学科なんて贅沢だ。

実学系でもなく、おそらく就職に有利ってわけでもない。
すんごいお金持ちの家ならまだしも、一般家庭に育った私が『何が何でも受験させてほしい』とは言いづらかった。
結局は親の金なのだ。私が稼いだ金じゃない。
父とだってきっと、ひと悶着あるだろう。

そして最も大きな問題は、このあたりの私大には哲学科が設置されていないということだった。
今の私の学力で国立大ってのは正直かなり難しい上に、運よく受験に成功したとしても、加瀬くんとは間違いなく遠恋になる。
彼と私とじゃ学力に差がありすぎるから。

そーゆうことをアレコレ考えてみて、最初は「こりゃダメだ」って思ってた。
ところが。人間ってヤツは。
ダメって思えば思うほど、逆にうずうずと手を伸ばしてみたくなっちゃうものなのだ。

で、本気で決心したのがバレンタインの後くらい。

うちの学校では、最終学年のクラスは希望の進学コースにあわせて振り分けられることになっている。私は私立文系で希望を出していて、この頃にはクラス分けのための進路希望調査はとっくの昔に終了していた。

時はすでに2月下旬。悩んだ末、私は藤代先生に希望の変更をお願いしてみたのだ。国公立大文系クラスへ入れてもらえませんかって。

私の希望がどうなるかは新学期になってみないとわからない。
結果、私立文系クラスに振り分けられていたとしても、それとは関係なく受験はするつもりだった。
そのための受験勉強開始だったりする。

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