そして放課後。

部室の会議用テーブルの上にちょこんと置かれたシックな小箱を、オレは期待に満ち満ちた目でじっとみつめていた。
今度こそ、小宮山にもらったやつだ。オレの、チョコ。

ピンクのリボンをつーっと解いて、カパッと蓋を開けたらーーー

「うおっ、すげえええええ!!」

小宮山のチョコは、小さなガトーショコラだった。

「コレ、もしかして作ったの??」
「ウン。作った」
「!!!」

手作りのチョコもらったことなんて一度もない。そもそもオレは義理チョコすらほとんどもらったことがないのだ。
中学の時、断固受取拒否した森口さんのチョコ以外で、これはオレがもらった生まれて初めての本命チョコだった。

「ありがと。スゲーうれしい・・」

幸せをかみしめながら、最初の一切れをパクリと頬張った。
「うま!」
「ホント!? ヨカッタあ」
小宮山がほっぺをピンクに染めてオレをみつめる。

基本、小宮山はわかりやすい。オレへの気持ちは、だいたい丸出し。
おかげでオレは、小宮山の顔を見てれば安心していられた。
それもこれもちょっと前にしたあのデッカイ喧嘩で、ハルキへのコンプレックスを手放すことが出来たから。
あれ以来オレは、ハルキに対して無駄にヤキモキすることがなくなった。