スマホをのぞいてた加瀬くんが複雑そうな顔をする。
「なんか・・本気でオレを狙ってるカンジがしねーな」
「だといいけどね」

だけどわかったことといったらそれだけ。
それ以上は何も手がかりがない。
「どーしよ、コレ。身元がわかんねーんじゃ返せねえしなあ・・まあもう開けちゃってんだけど」
加瀬くんが腕組みして、うーんってうなる。
「まいっか。食うか」
カパッと蓋を開けて加瀬くんがチョコをひとつ摘みあげた。
「食おーぜ。捨てるのもナンだし」

加瀬くんがハイって箱を差し出してくれるんだけど、私はやめておくことにした。
「加瀬くん食べなよ。私はいいや」
「なんで?」
「だってこれは加瀬くんのためのチョコだから・・」
誰がどんな気持ちで加瀬くんに渡したのかはわからないけど、彼女が食べちゃダメな気がした。
それに、正直に言えばツラくて食べられない。
私は彼のもらったチョコレートに手を伸ばすことができなかった。

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