それは3限が終わった後の休み時間のことだった。

加瀬くんが席についたまま、勢いよく手招きをしてくる。
なんだろうと思って彼のそばへ行ってみれば。

「コレ、ありがと」

加瀬くんが机の中に手をつっこんでそおっと取り出したのは、リボンのついたブルーの小箱だった。
「サプライズ?? 手渡しでもらえんのかなって思ってたから、さっきみつけてビビったわ」
すっごいご機嫌の加瀬くんにキラッキラした笑顔を向けられるーーー

ーーーのだが。

入れたのは私じゃない。
私のチョコはまだカバンに入ってる。

「それ、ちがう。私じゃない」
「・・・・エ!??」
加瀬くんが慌てた様子で、手元の小箱に視線を落とす。
「ならコレってーーー!?」
「誰だろーね。ヨカッタね」

機嫌が急降下した私に気づいて、加瀬くんが再びハッと顔を輝かせた。
そうだった。加瀬くんは妬かれるのが大好きだった。
「ねえそれ、ヤキモチ!? 絶っっ対ヤキモチだよな? そーだよな?」
ズケズケとそう言われて、私は思わず唇を噛みしめた。図星の指摘ってなんでこんなに腹立たしいんだろうーーー

「そーだよ。ヤキモチ! 悪い!?」
加瀬くんに非難がましい視線をぶつけつつ、それと同時に小箱のほうへは切ない視線をタラタラと注ぐ。

「ねえ・・なんでこんなのもらっちゃうの・・?」

2月14日。今日はバレンタインである。