加瀬くんの眉がぴくりと上がる。
「オマエ、さっきのルール覚えてる?」
「は?」
「大人しくオレのゆーこと聞きます、って約束しただろ? アレ、守れよ」
「えええ・・」

うっわあ。きたきた。
はじまった。

加瀬くんがこんなふうにルールだの約束だのって並べはじめたら、要警戒。
これはもう全力で駄々をこねる構えだ。

「チョットまって。あのルールって、最中のマナー的なことなんでしょ? だったら今はどー考えても適用外じゃん!」
「そこはおおめにみろよ。だってもう、次いつできるかわかんねーんだぞ!?」

くるりと身体をひねって私の上にのっかると、加瀬くんが私のほっぺにすうっと鼻先を滑らせた。
「なあ、オネガイ」
その声も仕草も。いつにもまして格段に甘い。
好きだ、頼む、お願いって囁きながら、加瀬くんが次々とキスを降らせる。
優しくて可愛らしい、エロさの欠片もないキスをたっくさん。
そのコドモみたいなキスは、私の心をかえって激しく揺さぶった。

「なあ、ダメ?」