ボンヤリしてる私の腕をひいて、加瀬くんが私をソファに座らせる。
「心の準備、できた?」
「い、いや、できてない。まだ全然」
「あっそう。じゃ、ゆっくり準備していーよ。オレ、好きにしてるから」
私のすぐそばに座り直した加瀬くんが、様子を見ながらちょっとずつキスしはじめる。そのうち、耳の後ろに手を差し込まれて背筋に震えが走った。
「あのさ、これじゃ何にも考えられない」
「もうさあ、考えないほうがいいんじゃねーの?」
って加瀬くんが笑う。
「小宮山はどっちかっていうと考えるのやめたほうがいいよ? 準備はオレが代わってやるから」
「代わるうう?? 準備できるの? 加瀬くんが!?」
「できる」

加瀬くんの言う準備が何かって言ったら、それはーーー

「ねえ、どう?」
「・・・」
「頭、ほどよくマッシロんなった?」

ソファの上。私に覆いかぶさってた加瀬くんが私の首筋からちょっとだけ顔を上げて、耳元で囁く。
頭なんかとっくにマッシロだった。もう何にも考えられない。
わずかに首をふって頷く。

「今ならデキル気がしない?」
こくりと頷く。

「んじゃ、続きしてもいい?」
もうひとつ頷く。

アタマはもうマトモに働かない。
加瀬くんの求めることに、ただ頷いた。