まさかまさか。

いやもう、絶対に間違いない。
加瀬くんが目指してるシュクハクシセツってーーー

ビビリすぎて動けなくなってる私に加瀬くんが小声でささやいた。
「こんなとこで立ち止まってると目立つヨ?」
「~~~!」
たしかに。どう考えたってマズイ。
高校生男女がホテル街で立ち尽くしてるなんて。
誰かに見られたらと思うと嫌な汗が滲んだ。
「とりあえず入ってから考えれば? 小宮山がどーしてもイヤなら何にもしないかもしれない」
「かもれない??」
「ウン。カモシレナイ・・」

加瀬くんのいい加減な物言いと騙し討ちのようなこの展開に、焦りと怒りが入り混じる。

「ーーーか、か、加瀬くんのバカあっっ!!」

だけど私は加瀬くんのそばから一歩も離れられなかった。言行は甚だしく不一致だが、私をハメた張本人にすがりつく。
だって不安な時ほど余計にそばにいたいんだから、もうどうしようもない。

私の様子をじーっと観察してた加瀬くんは、へへへと顔を綻ばせーーー

「いこ」

加瀬くんが私の手を引いて歩きだす。
加瀬くんが部屋を取ってる間も、ふたりで狭いエレベーターに乗り込んだ時も、やっぱり私はずうっと加瀬くんから離れられなかった。