「ねえ、全部オレがいいって思わない?」
「え? なんか言った??」

「や・・なんでもナイ」

そうボソッとつぶやいた瞬間、オレらの耳元で何かが風を切った。
この時のオレは小宮山のことしか頭になくて、さっき小宮山が警戒していた暗闇からの不意打ちのことをすっかり忘れていた。
結果、オレだけがソレをまともにくらってしまう。

「うっわあああ」

すげービビって、オレは気がついたら小宮山にしがみついていた。
絵ヅラは最悪。タッパのあるオレがひとまわり小さい小宮山にすがりつく様子ときたら、まるで女子。
そしたら半笑いの小宮山が、暗闇の中、オレの背中をさすりつつ優しく声をかけてくる。「大丈夫? 怖かった?」って。

「ちょ、ちょっと怖かった。くっそー、やられた・・!」
「じゃあ、私が先歩いてあげる」

まだ胸がバクバクいってるオレの手をとって、小宮山がオレを背中に庇って半歩前を歩き出す。

オマエ、やること結構、男前だネ? 
できればオレがそれやりたかった。