「んじゃ、聞くなよ。なんなの!?」
「うるせーなあ。うらやましいんだヨ!」
「あーあ。律だけ彼女がいるとか不公平。女子ウケ悪いクセにさ」
なんて尚にまで悪態をつかれるけれど構わない。
今のオレの関心事は、もっぱら小宮山のコトだけ。

小宮山には年内って言ったけど、オレの目標はあくまでもクリスマスだった。大晦日に返事もらったって、いいコトなんかいっこもない。すぐに正月がきてお預けくらうのが目に見えてるからだ。

ホントはもっと簡単にウンて言わせるつもりだった。
なのに今回ばかりは全っ然ダメ。ビビリの小宮山は絶対に首を縦にふろうとしない。

「小宮山次第ってなんだよ。小宮山返事くれねえの?」
「・・返事も何も誘ってナイから・・」

弱気にそうつぶやくと、所詮他人事のふたりが「今すぐに誘え」つって面白半分にオレを煽りはじめる。
そりゃオレだって誘えるもんなら誘いたい。
だけど、小宮山の心の準備とやらがいつまでたっても終わんないのだ。

「無理だろーな・・小宮山の前でラブホとか言ってみろよ。秒で逃げられるわ・・」

昨日のことだ。
オレはしつこく食い下がって小宮山に聞いてみた。
「心の準備ってなんだよ、なにすんの?」
「イロイロだよ」
「内容言えよ。手伝ってやるから」
「そんなのムリ!」
・・ってカンジでなんにも教えてもらえない。
結局、小宮山がしたい準備って何なのか、ひとつもわからないまま。

「あーあ。ケーキ食うだけで終わりそう」

もちろんそれだってきっと楽しいんだろうけど。
だけどオレは。
やっぱどうしても、小宮山自身が欲しかった。

***