「よし。じゃあ、そろそろ大通り歩く?」
「ウン。いく」

格段に賑やかになった飲食店街を抜けて並木のある大通りへ出ると、どこまでも続く長い光の帯が視界いっぱいにキラキラと輝いていた。

まだそんなに遅い時間じゃないから、小さな子供を連れた家族も多い。さっきの私たちみたいに、道端に座り込んで肉まん食べてる子たちもいる。みなそれぞれが、坂川の夜を楽しんでいるようだった。

「なあ、小宮山あ。さっきのハナシだけどネ・・?」

クリスマスの大通りを機嫌よく歩いていた私に、期待に満ちた目をらんらんと輝かせた加瀬くんが『前倒し』の件を再び持ち出してくる。
今回は熱量が違う。なにがなんでも前倒ししたいって圧が半端ない。

「オマエ決めるのおっせーから、期限決めとこ? いつまでに前倒しの返事くれるか」
「ええっ、じゃあ今返事する。ヤだ」
「チョットまて。なんで断んだよ!」
「ハズカシイからに決まってんじゃん。無理、絶対」

加瀬くんが愕然とする。

「無理ってオマエ・・ハラ決まったんじゃねえの?」
「GWまでにハラくくるつもりだったの! なのにクリスマスなんてあとちょっとしか時間ないじゃん。心の準備が間に合わない」
「時間なら十分あるだろ。ひと月以上あんぞ? えーっと・・」
って、加瀬くんがキッチリ日にちを数え始める。