ケーキの右半分をさっさと食べ終わった加瀬くんが、真ん中にのっかってるイチゴを私のほうへぐいぐいと寄せてくる。
「加瀬くん、イチゴ食べていいよ?」
「え」
「好きだよね? イチゴ」
って言ったら、加瀬くんの顔がうっすらと赤く染まった。

見てたらなんとなくわかる。加瀬くんはイチゴののっかったやつが好き。
クレープ食べた時は私のイチゴを勝手につまんでたし、かき氷だっていっつもイチゴだ。

「いーよ? 食べても」

モジモジしてる加瀬くんを促すと、しばらく無言で悩んでた加瀬くんが、イチゴにそーっとフォークを突き刺した。
「・・じゃ、じゃあイタダキマス」
そしてぱくりと一口。
つやつやした真っ赤なイチゴが、加瀬くんの口に消えた。
恥ずかしいのと、おいしいのとが半分ずつくらい混ざった加瀬くんの表情に胸がほんわりあったまる。