盛大に心を削られながらも、小宮山が大人しくしてる間にオレは彼女の説得にかかった。

「別れたくない」
「・・・」

「好きだ、小宮山。一緒にいたい」
「・・・」

んだけど、オレが何を言っても小宮山は無反応。そっぽ向いたまま身じろぎもしない。
どうしたらいいかわからなくて、小宮山の頬にひとつ、キスを落としてみる。そしたら・・

「イヤだって言ってんじゃん! こういうのしたくない!!」
「なんで? そんなにイヤ?」
「イヤ!!」

悔しくなったオレは件の耳たぶにも唇をよせた。
最初に一度だけギクリと肩をすくめた小宮山だったけど、反応があったのはそこまでで、その後はオレが何しようがぴくりともしない。
あんなに耳ヨワイくせになんで・・?

小宮山の顔を覗き込んでみて、オレは愕然としつつも静かに納得した。
ーーー小宮山の顔、死んでたから。

緩んだオレの腕から小宮山がスルリと抜け出していく。

「もう帰る」
「・・・」
「お互いアタマ冷やしてからまた話そ?」

今度こそカバンをつかんで立ち上がった小宮山をオレは下から呆然と見上げた。

ああオレ、ホントにバカだった。
つまんないことに拘りすぎて、一番大切なものを失いかけてる。

誰が小宮山の正解か、とか。
それを証明する確かな証拠は何か、とか。
しょーもないことにばっか気を取られて、小宮山の言うことに耳を貸さなかった。