ふたりきりですごした坂川の夜が楽しかったオレは、学校帰りの小宮山をつかまえては彼女をオヤツに誘うようになった。
いつも一緒の西野と佐々木が部活の日に、一人で下校する小宮山を狙う。
下駄箱や校門の辺りで小宮山を捕まえちゃ「小宮山、偶然だネ? 一緒にオヤツ食べて帰ろ?」って。

最初はバッサバッサ容赦なく断られてたんだけど、でもコレ、実はちゃんと誘い方がある。

「なあ、オレの数プリ、見たくない??」
「み、みたい・・」

学校から少し歩いたところにある公園の大きな百日紅の木陰は、周囲の植栽のおかげでほどよく人目が遮られてて好きな女の子連れてくるにはもってこいの場所。
ここに座ってふたりですごすのが、だんだんとオレらの定番になっていった。

数学が死ぬほどキライな小宮山に宿題のプリントをチラつかせながら一緒に菓子食うだけなんだけど、それでもオレには十分楽しかった。