小宮山のボヤキは聞かなかったことにして、早速その手の中から一粒、チョコをつまんで食ってみる。
「へー、うっま!」
初めて食べるオレの知らないチョコはなかなかに美味かった。
「でしょ? これ、食べてみたくてさ!」
得意そうな顔をした小宮山が「美味しいんじゃないかって思ってたんだよね!」なんつって嬉しそうに笑うのだ。

ふーん。
自分が食べてみたかったやつ、オレにくれたのか。
オレが一緒に食べようって誘うのわかってて?

嫌がられているような、そうでもないような。
小宮山の距離の取り方は絶妙に、微妙。
だからこそ、余計にオレは期待をひっこめられない。

たとえば、この食い方だってその期待の表れだ。
オレはいつも、あらかじめ小宮山の手に山盛りチョコを盛っといて、そこからつまんで食うっていうイヤラシイ食い方をしている。
一番最初はホントに事故だった。でも2回目からはわざと。
やるたびに文句言われるんだけど、なんだかんだ言われながらもなぜか結局許してもらえちゃうからやめられない。
今じゃこの食い方が普通になってる。オレの中では。