「オレも船入に行ってました」
「なんだ、加瀬も川嶋と親しいのか?」
「いえ、全く」
「なら何しに行ったんだ」

今、強烈に気まずくなってる小宮山の前でズケズケとそう聞かれる。
誤魔化すわけにもいかないから、仕方なくホントのことを伝えた。

「小宮山がシンパイだったからです」
「小宮山? なんで?」

「オ、オレの彼女ダカラ・・」

ぐわーっとスゲー勢いで顔が赤面していくのが自分でもわかった。
くっそう、オレはただテレてるワケじゃねえ。いろんな事情コミでこうなってんだ。言えねえけど。

それ聞いた藤代が「ふーん。カッコイイじゃねえか」ってオレを笑う。
「じゃあまあ、遅刻の理由は小宮山と同じってことにしといてやるよ。もういいぞ。メシ食え」
って言われてオレらは解放された。

「・・・」
「・・・」

職員室を出てからもやっぱり互いに無言。
並んで歩いてても、小宮山は真っ直ぐ前を向いたまま、絶対にオレのほうを見ようとしない。

オレらの初めての冷戦は、翌日以降にも持ち越して、まあまあ長引くことになる。