オレの言葉に小宮山が目をまん丸く見開いた。
「チョットまってよ、ホントに違う!!」
小宮山が顔を真っ赤にしてワナワナと震える。
「ハルキくんに何されたって気持ちよくなんかならない! ドキドキするのも、キスされたいのも加瀬くんだけ。ハルキくんは違う!」

「ウソだね」
「ウソじゃない! なんで信じてくれないの?」

「だって!!」って言いかけて口をつぐむオレに小宮山が怪訝な顔を向けてくる。
「だって何!? 理由があるなら言ってみてよ」

理由はある。

「・・だってオマエ、ホントはオレよりハルキのほうが好きだよね?」

これ実は、オレの思うド真ん中の『本当の理由』とはちょっと違う。
その周辺に転がってたヤツを急遽ひっぱってきただけだ。
だけど、コレは『絶対に言っちゃダメなやつ』だった。ポロリとこぼれたオレの言葉に小宮山の顔が凍りつく。

実は、酷いことイッパイ言いながらも、オレは未練がましくずーっと小宮山の腰を抱いていた。口じゃあアレコレ言うくせに、不安でたまんないからぴったり身体をくっつけて。
だけどその腕を、小宮山がベリッてはがして、ポイッて放り投げる。

「もういい。触らないで」

小宮山はそう言うと、オレからヒト一人分くらいの距離をとって離れて、なんにも言わなくなってしまった。