春樹くんを乗せた電車をボンヤリと見送っていたら、
「なあ、小宮山」
って加瀬くんが声をかけてくる。

「なんで違うって言わねえの?」
「ハイ?」
「なんでオッサンにハルキの彼女じゃねえって言わなかったの?」
「・・エ??」
私には加瀬くんが何を言おうとしているのか、よくわからなかった。
ポカンとしてる私に痺れを切らした加瀬くんが眉を吊り上げる。
「だから! ハルキがオマエのこと彼女だって言った時、なんで違うって言わなかったんだよ!」
「えええ・・ソコ!?」

いやいやいや。

「言えないよ。そんなこと言っちゃったら、あの場で春樹くんどーなんの?」
「それでもダメなもんはダメだろ。ウソだし! それにオレ、アイツのことなんか心底どーだっていい」
「えーー・・」

「オマエさあ、これから先なんかある度にあーやってナンベンでも彼女のフリしてやるつもり?」

ああ、そうか。
確かに加瀬くんの言うとおりだ。

「そっか・・そうだよね、ゴメン」

***