そんなこんなでなんとかコトがおさまった頃、私たちから少し距離を取って立っていた春樹くんがぽつりと口をひらいたのだ。

「すみれちゃん、父さんがヒドイこと言ってゴメン。でもオレはあんなコト思ってない。だってーーー」

なにか言いかけた春樹くんの小さな声は、突如構内に響き渡りはじめた予告音に掻き消された。
サラサラのキレイな髪をなびかせて、春樹くんが寂しそうに笑う。
それから春樹くんは、入ってきたばかりの下りの電車にぴょんと飛び乗った。
学校へは向かわない、逆方向の電車に。

「加瀬くんもゴメンね。じゃ、バイバイ」
「春樹くん、学校は!?」
「今日はサボる」

ガーッて閉まってくドアの向こうから春樹くんが手をふる。
どこか清々しい顔をして。