そうこうしているうちにロータリーの端のほうにシルバーのバンが止まった。
それを見て春樹くんが顔を上げる。

「あ、母さん来たわ」

車からおりた女性がこっちに気づいて手をふり、小走りで近づいてくる。
春樹くんのお母さんは、これまたビックリするような美人だった。

「ハルキ、ありがとね。・・ええっとこちらは?」
「オレの同級生。一緒に父さん見ててくれてた」
「小宮山です。ハジメマシテ」
私が挨拶をすると、女優のようなお母さんがムチャクチャきれいな表情で微笑んだ。
「まあ、ありがとう。迷惑かけてごめんなさいね」って。

それから、お母さんと春樹くんは必死で眠っているお父さんをゆり起こした。車まで歩いてもらわないといけないから。

目を覚ましたお父さんは、お母さんを見るとそれはそれは嬉しそうに甘えはじめた。

うわあああ。ステキ・・・

片方が酔っぱらいとはいえ、すんごいレベルの美男美女である。
仲睦まじいふたりの様子にウットリと頬が染まった。

しかし。この後すぐ。

この甘い空気は、一瞬にしてかき消えてしまう。
お父さんが豹変したからである。