駅はもう目と鼻の先だけれど、一瞬で帰る気が失せた。

「そんなの、いっくらでも言ってやるし、してやるケドさ・・」
クレープ握りしめたまま、小宮山の耳元でコッソリ囁く。
「ここじゃ無理だろ? だーれもいないトコでならするけど・・今から行く?」
小宮山がオレのシャツをぎゅうっと掴んで頷いた。
「ウン。じゃあ、連れてって。だーれもいないトコ」

「!!!」

この展開にオレは浮き足立った。

「いく! 連れてくからソレ早く食え!」
ほとんど進んでない小宮山のクレープを指差して急かす。
「待って、もうちょっとかかりそう」
「んじゃもーオレが食う!!」

なのに、だ。
こういう時に限って。

「ーーーあ」

ツナマヨを無理矢理全部口にねじ込んで、更に小宮山のイチゴに手を伸ばそうとしたところで、知ってるヤツと目が合ってしまった。
商店街の奥のほうから飯田と早坂がこっちへ向かって歩いてくる。

「よう。なにしてんの?」

「・・フレーフ、ふっへは」
「くちパンパンじゃねーか。わかんねえよ、バカ」