だけどのんびり落ち込んでる暇なんてなかった。上り線のルルルルルって予告音がホームに響き始めたからだ。
「おまえはあの自販機の辺りから乗れ!」
ここからすんげえ遠いホームの一番端っこを指さしてハルキを追い払ってから、オレは陸橋を渡って上り線のホームへと向かった。
その途中でのことだ。
「加瀬先輩!!」
階段を下りていたら後ろから早坂が追いついてきた。
「またオマエか。今度は何?」
「生徒会からの連絡、先輩の机に置いといたんで明日見てください!」
「えーー、次はなんだよ。めんどくせえなあ・・」
今年度の生徒会はマジメなメンバーが多く、仕事が丁寧で事細かい。
「あー、でもね? いいコトもあります! 今週末までに生徒会に出すプリントあったじゃないですか。飯田先輩にアレの書き方聞いたら、代わりにほとんど書いてくれマシタ・・」
そう言って早坂はひとりで勝手に赤面した。
ちなみに飯田とは生徒会で副会長をしている早坂の彼氏のことだ。
勝ち気な性格してるくせに早坂はすさまじい照れ屋で赤面症。『飯田』ってフレーズに脳が反応しただけでこーなる。
「オマエさあ、そのいちいち赤くなるのどーにかしろよ」
「無理です! だって自分じゃどーにもならないんです!!」
より一層顔を赤らめた早坂と一緒に陸橋を下り、並んで歩きながら上り線のホームに下りた時、ふと視線を感じて顔を上げると下りのホームにいる小宮山と目が合った。その表情にドキリと大きく胸が跳ねる。
小宮山の、あの顔ーーー
だけどそれはほんの数秒の出来事。
ガーッて入ってきた電車の向こうに小宮山の姿は一瞬にして消え去った。
オレはドキドキと胸を高鳴らせつつ、ひとり、電車に乗り込んだ。
早坂なんてとっくにどっかに行っちゃってすでに影も形もない。先輩であるオレにサヨウナラの一言すらなかった。
が、小宮山にはそんなことわからない。
まだオレらが一緒にいるって思ってるかも。あの強烈に赤い顔した早坂とオレがふたりでいるって。
オレはいそいそとポケットからスマホを取り出した。もしかしたら小宮山が連絡よこしてくるんじゃないかと思って。
だけど結局、小宮山からは何の反応もなかった。
電車に揺られてる間中オレはずーっとスマホを握りしめていたというのに。
くっそう。可愛くねえな。
もっと必死にオレに手を伸ばせ。
薄暗いチャリンコ置き場を歩きながら、ウンともスンともいわないスマホをカバンに放り込む。
この日からオレは、小宮山のヤキモチがほしくてほしくてたまらなくなった。
「おまえはあの自販機の辺りから乗れ!」
ここからすんげえ遠いホームの一番端っこを指さしてハルキを追い払ってから、オレは陸橋を渡って上り線のホームへと向かった。
その途中でのことだ。
「加瀬先輩!!」
階段を下りていたら後ろから早坂が追いついてきた。
「またオマエか。今度は何?」
「生徒会からの連絡、先輩の机に置いといたんで明日見てください!」
「えーー、次はなんだよ。めんどくせえなあ・・」
今年度の生徒会はマジメなメンバーが多く、仕事が丁寧で事細かい。
「あー、でもね? いいコトもあります! 今週末までに生徒会に出すプリントあったじゃないですか。飯田先輩にアレの書き方聞いたら、代わりにほとんど書いてくれマシタ・・」
そう言って早坂はひとりで勝手に赤面した。
ちなみに飯田とは生徒会で副会長をしている早坂の彼氏のことだ。
勝ち気な性格してるくせに早坂はすさまじい照れ屋で赤面症。『飯田』ってフレーズに脳が反応しただけでこーなる。
「オマエさあ、そのいちいち赤くなるのどーにかしろよ」
「無理です! だって自分じゃどーにもならないんです!!」
より一層顔を赤らめた早坂と一緒に陸橋を下り、並んで歩きながら上り線のホームに下りた時、ふと視線を感じて顔を上げると下りのホームにいる小宮山と目が合った。その表情にドキリと大きく胸が跳ねる。
小宮山の、あの顔ーーー
だけどそれはほんの数秒の出来事。
ガーッて入ってきた電車の向こうに小宮山の姿は一瞬にして消え去った。
オレはドキドキと胸を高鳴らせつつ、ひとり、電車に乗り込んだ。
早坂なんてとっくにどっかに行っちゃってすでに影も形もない。先輩であるオレにサヨウナラの一言すらなかった。
が、小宮山にはそんなことわからない。
まだオレらが一緒にいるって思ってるかも。あの強烈に赤い顔した早坂とオレがふたりでいるって。
オレはいそいそとポケットからスマホを取り出した。もしかしたら小宮山が連絡よこしてくるんじゃないかと思って。
だけど結局、小宮山からは何の反応もなかった。
電車に揺られてる間中オレはずーっとスマホを握りしめていたというのに。
くっそう。可愛くねえな。
もっと必死にオレに手を伸ばせ。
薄暗いチャリンコ置き場を歩きながら、ウンともスンともいわないスマホをカバンに放り込む。
この日からオレは、小宮山のヤキモチがほしくてほしくてたまらなくなった。