「すみれちゃん、バイバイ」
「バイバイ、春樹くん」

小宮山に未練タラタラのハルキはフられた後も、オレらに出会えばこうやって声をかけては手をふっていく。
ただし、小宮山にだけ。オレのことはまるっきり無視だ。

だけどハルキがオレをどんだけシカトしようが、小宮山へ好意をダダ漏れさせようが、小宮山はびくともしない。
彼女は今日もオレにぴたっと寄り添って、にこやかにヤツに手を振った。
さっきまでぷんすかオレに腹を立てていたというのにハルキの前ではこうやって必ずオレをたててくれる。そんな小宮山にゴメンの意味をこめて、オレはこっそりと彼女の指先を握った。

小宮山への挨拶を終えると、ハルキはいつものごとく陸橋の下辺りまで歩いて行って立ち止まり、そこで電車を待ちはじめる。
これで終わるならいいんだけど、そうじゃない。

ヤツの挨拶には続きというかーーーシメがあるのだ。