ポテトサラダを口に運びながら、ほんの一瞬だけチラリと父の様子を窺うと、私はすぐにまた目の前の白いお皿に視線を戻した。

何があったか知らないけれど、あのドロドロと全身から漏れまくる不機嫌は、さっき食事中にかかってきた部下からの電話が原因だ。
とっくにその気配に気づいている母もまた、無言無表情を崩さない。
微動だにせずお味噌汁をすすっている。

構えてる。
当然だ。

つけっぱなしになってるリビングのテレビから騒々しい笑い声が響いてきて、それに眉をしかめた父がイライラとビールをあおった。んで、
「おい、誰だ、あんなくだらない番組みてるヤツは」
ってテレビを顎でしゃくる。

ピクリともしない私の隣で、恐る恐る母が顔を上げる気配がした。
「ごめんなさい。ニュースをそのままにしてたら、いつのまにか番組が変わってたの・・」
母がゴクリと喉を鳴らす音が聞こえると、それにつられて私の手のひらにもじわりと汗が広がった。