小宮山の「考えとく」って笑う顔が可愛くて、ついつい別のコトが頭をよぎっちゃう。ガマンできずに小宮山の耳元にそーっと顔をよせた。
「なあ、ちょっとだけ寄り道してこ?」
「いーけど、どこに?」
「人がいないトコ」
オレの下心を察した小宮山の顔が、じわじわと赤く染まってく。
「な、しよ? 寄り道」

通学路だから露骨にイヤラシイのはマズイと思って、冨永がしてくるような感じで彼女の肩に腕を回してみたオレ。が、小宮山は許してくれない。
「加瀬くん、何してんの!?」
「ダメ?」
「ダメにきまってんでしょ。場所考えてよ、フツーにムリ!」
恥ずかしがりの小宮山は、人目のあるとこでは絶対にイチャイチャしない。
オレの腕をガシッてつかんで、慌てて外そうとしてくんだけど小宮山をいなすのなんかチョロかった。

ムキになる小宮山がおもしろくて、小宮山のイヤがりそうなヤラシイNGワードをささやきつつ首に腕を巻きつけて遊んでいると、小宮山のスマホに短い着信があったのだ。
小宮山の肩を抱いたまま一緒になってのぞきこむと、それはマナからのLINEで。

『隣のバカをおとなしくさせて』

「なにこれ。バカってオレのこと?」
「そーじゃない?」

辺りをキョロキョロ見回してみると、オレらよりだいぶ後ろにマナがいた。ハルキと、誰かもうひとり男が一緒。

「・・・」
「・・・」

「小宮山、公園いこ」

小宮山の背中を押して、次の角で道をそれた。
ちょっと遠回りになるけど、いつもの公園へ行こう。
あの、百日紅(さるすべり)のある公園へ。