ガバッと立ち上がって怒る私に、座ったままの加瀬くんが下から手を伸ばしてくる。
「ゴメン。オレ、順番間違えた」
腕をひかれて、結局また隣に腰を下ろす。

「もっかいキスしたい」
「もっかい!? 今十分したじゃん、もうヤだ!」
「・・じゃなくて、コッチ」
加瀬くんの指が私の唇をなぞる。

「オレにくれるって約束したじゃん」

唇の端っこに催促するみたいにちゅってキスをひとつ。
「絶対優しくするから」って。

「なあ、いい?」

こんなの断れるわけがない。
結局、なにがどうしたって加瀬くんには抗えない。
だって私は彼のことが好きで好きで仕方ないのだから。

「ーーーウン。いいよ・・」

それから私たちは、初めてホントのキスをした。
遠くに花火の音を聞きながら、真っ暗闇の海岸で。