「小宮山なに食いたい? 食いたいもん今すぐ全部言って」
「そんなに急がなくても大丈夫よ? まだ全然時間あるし」

不思議そうにする小宮山を連れ回して、屋台をガンガンハシゴする。
小宮山がバイトしてたカフェが出してる店でもいっぱいサービスしてもらって、気づけば結構な量のメシが手に入ってた。

「ヨシ。こんくらいでいっか。小宮山、松原いこ?」
「松原あ?? なんで?」

しゃりしゃりカキ氷食ってる小宮山をせかして、オレらは松原を目指した。
小宮山が困惑するのも無理はない。松原で花火見るやつなんかまずいない。
法賢寺の参道を海まで下ると古い港がある。ホントなら会場はその港なのだ。

松原へついた頃にはもうだいぶ薄暗くなっていた。その薄暗がりの中でも更にいっちばん暗くて、いっちばん人目のなさそうな場所を選んで座ったら、さっさとメシをひろげる。

「完全に暗くなる前に食っちゃおーぜ」

焼きそばとたこ焼きと、あと小宮山のバイト先の店のデッカイ箱に入った何か。夜になってもまだバイトしてたマナがおまけしていっぱいつめてくれたんだけど、アイツは絶対校則違反だ。

見えにくいって小宮山に文句言われながらも、ふたりで食うメシはすげーうまかった。

灯りのない松原はそもそもがマックラ。
日が暮れたらもう、なーんにも見えなくなる。