バイバイって帰ってく春樹くんの背中を見送りつつ、加瀬くんが満足そうに顔をほころばせる。
「小宮山、耳ヨワイね??」
「さっきの何!? なんてことすんの・・」
「だーってアイツ、オレの目の前で告りはじめんだもん。邪魔してやったわ。へへへ」
ヤラシイ顔して得意そうにふんぞりかえる加瀬くんから目をそらして、目の前に広がる青い海を眺めた。

がんばってほしいって心から願った。
まだ間に合う。十分青春取り戻せる。
私じゃその相手にはなれないけど。

ボンヤリお茶飲んでる私に加瀬くんが言う。
「オレさあ、中学ん時の小宮山に会ってみたかった」って。

「いやいや。すんごい枯れ果てたんだってば。あー加瀬くんと同中じゃなくてヨカッタ・・」
「それでもオレ、好きになってたと思うよ。絶対」
「エヘヘ。ありがと」

中学の頃の加瀬くんは、野球部で丸坊主だったらしい。
「うっわー、見たかった!」
きっと可愛い男の子だったに違いない。
もしもその頃の彼に会えていたら、私もきっと恋をしたはずだ。坊主頭の加瀬くんに。