「ねえ、なんでオレ、このバイトしてると思う?」
「・・あのハナシの続きがしたいからじゃないの?」
警戒を解かず眉間にシワよせたままの私に、春樹くんはあっけらかんと言い放った。
「それもなくはないけど、でも違う。オレの目標は花火大会までに立ち直って、加瀬くんからすみれちゃんをゴーダツすること。だからすみれちゃんのそばにいる」
「ゴ、ゴーダツ!?」

なんつー物騒な物言い。
それなのに春樹くんはえらく楽しそうで嬉しそう。
わくわくと頷いてみせるのだ。

「ウン、そう。ゴーダツ。まだ間に合うんじゃねえかなって思って・・」
「間に合うって何が??」
春樹くんがウッスラ赤面してじっと私を見る。
「たぶんだけどさ。ふたり、キスまだなんでしょ?」

「・・・・エ?」

頭、マッシロ。

「ななな、なんで春樹くんがそんな突っ込んだコト知ってんの!?」
顔ひきつらせて立ち尽くす私に、春樹くんが申し訳なさそうな顔を向けてきた。
「ゴメンね。オレ、全部聞いてた」
「聞いてた!?・・って何を??」

それは春樹くんが加瀬くんにムチャクチャ怒鳴られて、部室から叩き出された例のあの日のことだった。

「あの後、オレまだしばらくドアの外にいてさ」
「え・・ええっ!? じゃ、じゃあまさか・・」

あの後の私たちが話してたこと、してたこと。
それ、全部全部ーーー