「なあ、ハルキがいんだけど!」
「・・そーなんだよね。春樹くんが一緒だなんて知らなくて」
気マズそうにオレから目をそらす小宮山は、背後のハルキにチラリと視線を送りつつ会計用の紙をくるくるっと丸めて透明な容器に差し込んだ。
「なあ、ここ辞めない?」
ダメ元で一応言ってみるけど、困った顔した小宮山が「それはムリ」って首を横にふる。

うん。わかってた。
やっぱ辞めらんないよなあ。

「じゃあオレ、シフトが午前の日はここに様子見にくる」
「そんなのたいへんじゃん。ムリしなくてもいいよ?」
って小宮山が心配そうにオレを見るんだけど。
「いんだよ、来たいの。オレ、オマエに会いたい・・」
オレがそう言うと、トレーのふちをぎゅううっと握りしめた小宮山が頬を染める。
「ありがと。嬉しい」って恥ずかしそーに目を伏せて。

甘酸っぱい空気を漂わせるオレらを・・ってかオレを、近くを通りかかったマナが視線だけよこして器用にバカにしてくる。
天敵のような女とシツコイ恋敵にかこまれつつも、オレは大事な恋人との束の間の逢瀬をできうる限り満喫。
「じゃあ、そろそろ戻るね。ゆっくりしてってね」
って嬉しそうに手をふって厨房へ戻ってく小宮山の背中を切なく見送った。