その日の帰りに、私は加瀬くんにバイトの話をした。ちょっと得意気に。

「バイト決まったってオマエ、面接は??」
「なくていーってさ。友達特権で」
「なにそれ、ゆっる!」
カフェのバイトはLINE1本でアッサリと決まった。
「いつからやんの?」
「講習終わった次の日から」
「じゃあオレ、一回メシ食いに行っていい?」
「ウン。きてきて」

実は加瀬くんも夏休みはずーっとバイトだ。1年の頃からずっと同じとこでバイトしてて、この夏休みもやっぱりそこで働くらしい。

「私も加瀬くんのバイト先、行ってみようかなあ」
「オレんとこ、オモシロイもんなんかなんもないよ?」
「いーの、いーの」

おもしろくなくたって別に構わない。
だって加瀬くんが見たいんだから。

「あー、あっつ。なあ小宮山、カキ氷食って帰ろ?」
「ウン!」

暑いって言いながらも加瀬くんは私の手をとって、お店のある通りへぐいぐいとひっぱっていく。
そしたらお店の前にはすでに栞と冨永くんがいて、プラスチックのストローを振り回しながら手をふる冨永くんの様子に思わず笑いがこぼれた。

抜けるような青空に白い雲。
加瀬くんとすごす初めての夏はとにかく暑い。

ほどなく、私たちの高2の夏休みがはじまった。