講習も残すところあと2日。
ざわざわと騒がしい休み時間に、世界史選択の教室にマナがやってきた。マナの用事はなんとバイトの勧誘。募集先はヒロちゃんのカフェだ。

「花火大会まででいいからさあ。いっしょにやろうよ。ね?」

ヒロちゃんのカフェは、今年初めて法賢寺の花火大会に出店することが決まっている。屋台じゃなくて、参道に面した空き家を借りて出店するのだそうだ。
その準備が思った以上に大変だったことと、あとは急な人手不足がバイト急募の理由らしい。

「いいじゃん、4時間だけじゃん? やろうよお」

うちの学校では、申請して許可がおりれば春・夏・冬の長期のお休み中に限り日中17時まで、4時間だけアルバイトができる。
ただし3年生は不可。つまり私が在学中にアルバイトの経験ができるのは、この夏休みと冬休みのあと2回だけってことだ。
マナが一緒なら心強いし、坂川ならそんなに遠くない・・なんて考えてるうちに急速に心が傾きはじめる。

「やろっかなあ、バイト・・」
「やったあ! やろやろ! じゃあ約束ね!?」
って叫んだマナは一瞬でいなくなった。職員室へ申請書の不備を訂正しにいくとかで。ついでにすみれの申請書もとってきてあげるー!って言いながら。