「立ち直り方、知ってんでしょ? それ、教えてよ」

マジメな顔してじっと私をみつめてくる春樹くんに精一杯のポーカーフェイスを装いつつ、ブラインドの紐を握りしめて私は必死で考えた。
今ここで、春樹くんと前みたいに話し始めちゃったらどうなるかを。

いいコトなんてひとつもない。
最悪だ。きっと、誰にとっても。

だけど。

マズイってわかってんのにどうしても無視しきれない。
立ち直りたいって願う切実さも、どうしたらいいかわかんなくて途方に暮れる心細さも、全部全部、知っている。
すんごいわかるから、それだけにほっとけない。

私は最後の窓を開け放ちつつ、心の中で加瀬くんに謝った。
『ゴメン、加瀬くん。ちょっとだけ。愛も恋も一切関係ない、地味な話をするだけだから・・』って。

「お昼までだからね? 秘密なんかないけど、私に話せることは全部話す」
そう言って私は会議用テーブルをはさんで春樹くんの向かいに腰を下ろした。