そういえば加瀬くんはまだ、私が春樹くんを完全に突き放したことを知らない。

そうだそうだ。
ホウレンソウだった。

「加瀬くん、あのねーーー」

後ろにいる彼を振り返ろうとした途端、スリスリと頬をよせられて開きかけてた口がウッと閉じた。
「く、くすぐったああ・・！」
「オイ、逃げんなよ。なあ、コッチむいて？」
チラッと振り返ってみると、すんごい嬉しそうな顔した加瀬くんがすんごい楽しそうに笑ってる。

うっわあ、いい顔・・

もはや尊いとすら思えてしまう加瀬くんの笑顔に胸がつまる。
ああ、胸が。胸が苦しい。

この屈託のない、あっけらかんとした笑顔がどれだけ眩しいか。
私にとって加瀬くんは恋愛対象の男の子ってだけじゃない。私は加瀬くんに密かな憧れを抱いてたりもする。
たぶん、加瀬くんは私の気持ちなんてなんにも知らないんだろうけど。

どうして私を選んでくれたのかはわからない。
けれど、それは私にとって一生に一度あるかないかってくらいのモノスゴイ幸運だった。