早めに貼り出された講習後半の座席表を見て、加瀬くんの機嫌は再び急降下した。
私の席のひとつ前に、またしても「川嶋」の文字があったからだ。

おまけに後半は私たちの時間割も大きくズレた。
私は1・2限に世界史、加瀬くんは3・4限に理科だ。

そして始まった講習後半。
せっかく学校に来るのにすれ違っちゃうのももったいないから、私はあの空き部室で加瀬くんの講習が終わるのを待つことにした。

お昼を少しすぎたころ、部室のドアを勢いよくガラリとあけて加瀬くんが入ってきた。
「小宮山、帰ろーぜ」
「やった、帰ろ! ちょうど宿題飽きたとこ」
「へー、がんばってんじゃん。はかどった?」
私のワークをパラパラとめくる加瀬くんがシラけた顔を向けてくる。
「全っ然やってねーじゃねえかよ。いったいコレのどこをやってたってゆーわけ?」
「大丈夫大丈夫。最悪、加瀬くんの借りればいいから」
「オレ、見せねーからな!」
なんて話をしつつ、開け放ってた窓をふたりで閉めてまわった。

「小宮山あ、ハラへった。なんか食って帰ろ?」
後ろからくっついてきて、私を抱えたままブラインドの紐を引く加瀬くんのおなかがぐうと鳴る。
「オマエ、何食いたい?」
「おにぎりかな」
「ハイハイ。いつものね」
気の抜けた返事をしながら、加瀬くんが私の肩に顎をのっけて脱力した。
「はあ、落ち着く・・最近ムダに疲れることばっかだぜ。はーあ・・」

ここのとこ、さすがの加瀬くんもため息の数が増えていた。