かき氷を食った後は冨永たちと別れて、小宮山と海の方まで歩いた。
つっても海はすぐそこ。駅からそれて少し下ればあっという間に海に出る。

この辺り一帯は結構な範囲で遊泳が禁止されていて、一応砂浜はあるけれどビーチとしての需要は全くない。
おかげでスゲー静かで、だーれもいない。

松の木陰に座って海を眺める小宮山は、さっきからションボリと元気がなかった。
「どーしたよ、元気ない?」
「んーん。大丈夫」
へらへらとオレに笑ってみせる小宮山だったが、これは嘘。
小宮山のコンディションの良し悪しなんか、だいたいわかる。

「なあ、アレしてやろっか?」
「アレってもしかして・・」

「だっこ」

小宮山の顔がじわじわと赤く染まってく。
「ハイ」って腕を広げてみせたら、猛烈に恥ずかしそうな顔をした小宮山がギクシャクとオレの胸におさまった。
腕を回して極力優しく抱きしめる。
そしたら小宮山が満足そうに、はあって息をついた。

「キモチイイ・・」
「へへへ。元気出るだろ?」

だっこ。
響きのまんまの、健全な『だっこ』。
下心全部捨てて、ただヨシヨシと小宮山を甘やかしてやるだけなんだけど、小宮山はとにかくこの『だっこ』が好きだった。
たぶん、甘え足りてないから。