そのうち冨永くんが改札を抜けて、手をふりながらこっちへやってきた。
「よお、小宮山あ。加瀬は? もう帰ったの?」
「いや、それが・・今あそこにいる」
ってふたりを指差して教えると、冨永くんはそっちへ顔を向けてギョッとした。
「アイツなにしてんの!?」
「春樹くんに文句言ってる」
「嘘だろ、アイツもう文句言いに行ったの!? スゲーなあ・・」

もう、ってなんだ。
もう、って。
事情に精通してそうな、この口ぶり。

加瀬くんのことが気になるらしい冨永くんは「オレも一緒に待つ」って言って動かなくなった。

しばらくじいっとふたりの様子を窺っていた冨永くんが、ポツリともらす。
「なあ小宮山、加瀬のこと好きでいてやって」って。

もちろんそのつもり。
できることならこのままずうっと加瀬くんに束縛されておきたい。

「私さ、ホントに加瀬くんしか好きじゃないよ」
「そっか」

おそらく加瀬くんにタレこんだのは冨永くんだ。
私のこと疑ってたに違いない冨永くんは、私の言葉にすごーくホッとした顔をした。
「ならよかった。オレはさ、ハルキよりも加瀬にシアワセでいてほしいわけ」って言って。