私たちは、上りも下りも全部乗り過ごして春樹くんを待った。

「あ!」

そうこうするうちにホームに春樹くんが入ってきて、加瀬くんの目は春樹くんに釘づけ。春樹くんがいつものように陸橋の下で電車を待ち始めたのを確認してから、加瀬くんは私のほうをちょこっとだけ振り返った。
「ここで待ってて?」
「ウン」
くるりと向きを変えて歩き出す加瀬くんの背中を見送りながら、改めてスゴイなって思った。

自分のほしいものが何で、そのために何をするのか。

いつでもどんな時でも、それがハッキリとわかる加瀬くんには迷いがない。
気持ちのままに、真っ直ぐ歩いて行けちゃう加瀬くんの背中はすごくすごくカッコよかった。

ドキドキと苦しくなる胸を押さえて、私はふたりの話が終わるのを待った。
・・・
・・んだけど、加瀬くんが全っ然帰って来ない。

話が終わんないのだ。
腕組みしてこっちに背中向けてる加瀬くんに動く気配はまだ微塵もない。
手え出すなってひとこと言うのに、あんな時間かかるもん??
首をひねりつつ、なおも待った。