所は変わって、ここは学校最寄りの門島駅。
上り線到着をしらせるメロディがホームに響きはじめてから、もうしばらくたつ。いつもならここで手をふって陸橋へと向かうはずの加瀬くんがなぜか今日は動かない。

「ねえ、帰らないの? もうくるよ?」
「いい。乗らない。オレ、ハルキと話するから」
真面目な顔した加瀬くんは、一度、改札の辺りにじっと目をこらしてから私へと視線を戻した。

「え!!」

なんだかあの後ウヤムヤになってしまってすっかり忘れていたけれど、そういえば加瀬くん、春樹くんに激怒してたなって思い出す。

「話って何? 何言う気!?」
「オマエに手え出すなって言ってやんだよ」
スラっととんでもないことを口にする加瀬くんに私は固まった。
「うっ、嘘でしょ・・そんな恥ずかしいこと本気で言う人、いる??」
「・・いるんじゃない? オレとか」
ちょっと恥ずかしそうに視線を逸らすも、加瀬くんに撤回の様子はまるでない。
「あのねえ、スッゴイ嬉しいけどそんなことしなくていいよ?」
「いーや。オレはアイツにひとこと言ってやんねーと気がおさまらない」

止めてもムダって雰囲気をありあり漂わせて、ムスッと顔を曇らせる加瀬くん。揉め事の予感に、つい、いつものクセが出た。