教室に戻ってきたオレに冨永がチラチラと不安げな顔を向けてくる。
小宮山が席をたった隙をついてオレに心配そうに声をかけてきた。

「オイ、どうなった?」
「別にどーもなってねえ。大丈夫」
「ホントか!?」
「ホント」

冨永に返事をしながら、小宮山の机の上に出しっぱなしになってる英語の教科書をパラパラとめくってみる。
そしたら・・

「おお。四葉のクローバーじゃん」
冨永がオレの手元をじっと見る。

「これ、オマエにやるよ」
「なんで?? 小宮山のだろ、それ」
「いんだよ、いらねえから。一生読まねえ本にでも挟んどいてよ」
「はあ??」

ピラピラと平たいクローバーをつまんで冨永が迷惑そうな顔をオレに向けてくる。
「どうすりゃいんだよ、コレ・・」って。
ちょっと考えてから生徒手帳を取り出した富永は、慎重な手つきで表紙裏のカバーにクローバーを挟んだ。

冨永に主を変えたクローバーがぱたんと手帳にしまわれ、片付けられる。
それを見てほんのわずかにだが胸がスッとした。
こうやって少しずつ小宮山から春樹の影を取り除いていこう。
アイツが好き放題できるのは今日までだ。