加瀬くんの言う立場とは。
それはつまりーーー

「オレ、小宮山の彼氏になりたい」
加瀬くんがじっと私をみつめる。
「小宮山だって彼氏になら何聞かれたって悩まねえだろ？」

そう言われて私は黙り込んだ。

どうしよう。こんなのもう、好きって言われたのとなにも変わらない。
だけど、絶対にこれを告白だなんて認めるわけにはいかなかった。
だって認めちゃったら、『答え』を出さなきゃならなくなる。
つきあうか、つきあわないかの二択を迫られるに違いないのだ。

そしたら私は『つきあわない』ほうしか選べない。「彼女にして」だなんて今の私には口が裂けたって言えないんだから。

おもむろに顔を上げ、苦しいの承知で私はこの場をごまかしにかかった。
「いやいやいや・・じょ、冗談はそれくらいにしてもらって・・」
「冗談！？　どこが？？」
「ーーーどこがって、ぜんぶ。・・冗談だよね？」
「・・・」
自分でも思う。
こういうごまかしかし方はいやらしい、って。
それでも、私は『冗談』って繰り返してその場を強引にごまかすしかなかった。

加瀬くんが眉を下げてちょっとだけ笑う。
「わかった。うそうそ、冗談。もうやめる」
「だよね。アハハ・・」
白々しい愛想笑いの下では、これでもかってほど心臓が跳ねていた。
加瀬くんにバレないよう胸の中でこっそり深呼吸を繰り返す。

落ち着け。取り乱すな。
何が何でもこの場を切り抜けろ、って自分に言い聞かせながら。