ウンて言って、小宮山

私の知ってた春樹くんと、素顔の春樹くんはまるで別人だった。

「確かに性格が悪すぎる。ギャップがヒドくてついてけない」

ムッスリと眉間にシワをよせる私に、春樹くんがあからさまに疑わしそうな視線を向けてくる。
「よく言うよ。すみれちゃんだってネコかぶってるくせに。嘘臭えなって思ってたんだよね、オレ」
「う、嘘くさい!?」
「うん。なんつーか・・いい人ぶってんのが鼻につく、みたいな?」

図星の自覚がある私は、悔しさに震えた。

「言っとくけど! 春樹くんだって傍から見てるとすんごい胡散臭いからね? それ、自分で気づいてる!?」
「ハア!? う、胡散臭い? オレが??」
「ウン。もー強っっ烈に」
今度は春樹くんがショックで固まった。
自分じゃ一切そんなつもりはなかったらしいのだ。

黙り込む春樹くんに少しずつ背筋が冷えてくる。
マズイ。地雷、踏んじゃったかもしれない。
こりゃまたすんごい暴言吐かれて、手ひどい返り討ちに合うのではーーーって構えてたんだけど。

しかし彼はしばしの沈黙ののち、なんだかすごーく嬉しそうに、機嫌よく顔を上げてきた。
「ムカつくけど楽しい」って言って。
粘着質で、しつこくて、ネチっこいはずの彼が、妙にカラッと、清々しい顔を向けてくる。

「こんなふうに話せるのっていいな。なんかオレ、ちょっと胸がイッパイ・・」

実は私もまた、あることに気がついていた。
ラクなのだ。ものすごく。
私は今、目の前の春樹くんに1ミリも気を使っていない。

私たちの間には、なんともいえない独特の快感と高揚感みたいなモノがくっきりと漂っていた。

「なんか・・オレら、似てるね?」
「そーかもね・・」

実は、本音を曝け出す相手を慎重に選んじゃうのは、私たちなりの処世術でもある。
私も春樹くんも、世の中に怯えながら生きてる。自分をとりまく外の世界がコワイし、信用できない。
ケチつけられないように、攻撃されないように、本心をなるべく深ーいトコロに隠して、姿をくらますようにして自分を守る。傷つきたくないから。
私たちは自分を守ろうとする方法がたまたまよく似ていた。