んだけど私は思ったのだ。
こっちのほうが、よくないか?・・と。

しげしげと春樹くんの顔を眺めてみる。
嘘臭くて何考えてるかわからない春樹くんよりも、ありのままの春樹くんのほうがよっぽどよくはないだろか。
たとえ、少々感じが悪くても。

思ったまま彼にそれを伝えてみると、春樹くんは断固として首を横にふった。
「それはムリ。性格悪いのバレたら嫌われる」
「そうかなあ・・」
「優しくていいヒトに見えるほうがいいにきまってんじゃん」
って言いながら春樹くんは私の目の前で甘ったるくて優しげな、非の打ちどころのない微笑みを浮かべてみせた。

「うわあ・・スッッゴイ好青年・・!!」
肯定の意味でもって、うんうんと勢いよく頷いてみせる私に、春樹くんが嬉しそうに目を細める。
「でしょ?? オレの顔には優し気な雰囲気が一番しっくりくるんだよね」って。

隣に並ぶ春樹くんが私を囲うようにして手すりをぐっと掴み直した。途端にふたりの距離がぐっと近くなる。
「すみれちゃんだって優しいイケメン、嫌いじゃないでしょ?」
そう言って顔を寄せてくる春樹くんの鼻先がするりと頬をかすめてゆきーーー

「チョット! やめてよ!」

慌ててのけぞって彼から距離をとったのは、キスされんじゃないかって思っちゃったから。
はずみで側頭部がドアに直撃。ゴーンって派手な音がたち、周囲の乗客が何事かとふりむいてくる。

「いったああ・・・」
「慌てすぎでしょ。あー恥ずかしい」
私の頭をよしよしと撫でながら、春樹くんがクククって笑う。
「まさかキスされるとでも思った?? んなワケないじゃん。すみれちゃんっておブスのくせに自意識過剰~~」

底意地の悪い顔でニヤける春樹くんは、たしかに蹴り飛ばしてやりたくなるほどムカつく男だった。