下りの電車に一緒に乗って、船入でバイバイするまでの30分くらいの間、私たちはそれぞれの家のことをぽつぽつと話した。

んだけど、話してみてびっくり。
すんごい『通じる』のだ。
細かいことなんか話さなくても、お互いに伝わるし、わかる。
下手したら視線混ぜ合わせるだけで、ニュアンスや、間みたいなモノまで共有できちゃう。

上っ面だけで、ほとんどゼロだったはずの私たちの関係は、いきなり凄い勢いでひっくり返った。

「オレ、こんなこと話したの、すみれちゃんが初めて・・」
車窓に広がる海を眺めながら春樹くんがつぶやく。
「誰にも言えないこと話せるのって、こんなに気持ちいいモンだったんだね。オレ、知らなかった」

上っ面だけでニッコリするのをやめた春樹くんは、いつもよりだいぶ子供っぽい顔をして笑ってた。
おそらくこれは、彼の心からの笑顔じゃないかと思う。

「オレってさあ、優しそーなイケメンに見えるでしょ? んだけどホントはひとっつも優しくなんかないんだよね。愛想よくすんのも大っ嫌い。面倒くせーし」

「・・・・ふ、ふうーん」

自分を『イケメン』と言い切って憚らない春樹くん。
さっきチラリと垣間見えた別人ような彼を思い出し、裏がある人なんだろうな・・ってコッソリ考える。

「オレ、口も性格も悪くてさ。暗くて、粘着質で、シツコくて、ネチっこいんだよね、ホントは」
と、ムチャクチャ並べ立てる。要するにシツコイ性格らしい。
言われてみれば違和感はない。むしろしっくりくる。
だけどそうは言えないから一応気を使った。

「そ、そんなふうには見えないケド??」
「まあオレ、顔がいーからね。パッと見じゃわかんねーよ」

チラリと私に視線を流してからの渾身のドヤ顔。
間違いなくシッカリハッキリとイケメンの自覚があるらしい。

うっわああ・・・と私はちょこっとだけ身体をひいた。

こんな図々しくてふてぶてしい春樹くんを、私は知らない。
ポカーンて呆ける私をじっとみつめて春樹くんが言うのだ。
「こーゆうの、全部見せてもすみれちゃんは友達でいてくれる?」って。

「う、うん。まあそりゃ・・友達は友達だよ」
「ホントに?」
「うん」