ギラギラと怒りをたぎらせる私を見て、加瀬くんがポカーンてする。
たぶん私がこんなに怒るって思ってなかったから。

「私の嫌がることしないって言ったの、あれ嘘!? もういい。加瀬くんとはしばらく話したくない」
フンて顔を背けたら、ギクリと背筋を震わせた加瀬くんが机の上の私の手をぎゅうってにぎった。
「イヤ、まって。チョットまって! とりあえずこっち向いて!?」
「待つわけないし、今は顔見るのもイヤ! 手え離して!」

「こっ、小宮山ああ・・」

情けない顔をした加瀬くんが、私の顔を追いかけてきてのぞきこむ。
「なあ、ゴメンて。機嫌なおしてよ。頼むから!」
一生懸命私の機嫌を取ろうとする加瀬くんはもう必死。平謝りだ。

加瀬くんはこういう時、プライドなくわりと下手に出てくる。男のプライドとかメンツみたいなものをあまり気にしない彼は、こんなふうにカッコつけずにゴメンが言えちゃうのだ。