加瀬くんが前を向くと、さっきから私たちのやりとりを黙って見ていた隣の席の冨永くんが、ホクホクと顔を綻ばせながら声をかけてくる。
「へーえ、小宮山。加瀬に消しゴムもらったの。ヨカッタね?」
「あ、ウン」
「ちょっと見せてよ・・なにこれ、やけにキレーじゃん! そういやコイツ昨日まで豆みたいなショボい消しゴム使ってたもんね? 小宮山あ、コレ、新品だぜえええ」
・・と、見せつけるようにくるくると消しゴムをまわしてみせる。
「加瀬、やっさしーー! いっつも小宮山にだけ特別だネ? ね、小宮山?」
一見、私に話しかけてるふうであるが、そうじゃない。ほとんど加瀬くんの背中に向かってしゃべってる。
「加瀬、ロコツーーー」
「加瀬、わかりやすーーーー」
「加瀬、かーーわいい」
「ね? 小宮山」
実はこれ、冨永くんのお気に入りの遊びの一つ、加瀬くんイジリである。
後ろから山ほどひやかして加瀬くんをイライラさせたら、後は椅子にふんぞりかえって彼が食いついてくるのを待つだけ。
そしたらやっぱりーーー
「うるせーな、毎回シツコイんだよ! なんなのオマエ!?」
あんまり我慢しない性格の加瀬くんが眉を吊り上げて後ろを振り向いてくる。
そう、これがたまらなく面白いらしいのだ。
高2になってから、私の毎日はこんなかんじ。
***
「へーえ、小宮山。加瀬に消しゴムもらったの。ヨカッタね?」
「あ、ウン」
「ちょっと見せてよ・・なにこれ、やけにキレーじゃん! そういやコイツ昨日まで豆みたいなショボい消しゴム使ってたもんね? 小宮山あ、コレ、新品だぜえええ」
・・と、見せつけるようにくるくると消しゴムをまわしてみせる。
「加瀬、やっさしーー! いっつも小宮山にだけ特別だネ? ね、小宮山?」
一見、私に話しかけてるふうであるが、そうじゃない。ほとんど加瀬くんの背中に向かってしゃべってる。
「加瀬、ロコツーーー」
「加瀬、わかりやすーーーー」
「加瀬、かーーわいい」
「ね? 小宮山」
実はこれ、冨永くんのお気に入りの遊びの一つ、加瀬くんイジリである。
後ろから山ほどひやかして加瀬くんをイライラさせたら、後は椅子にふんぞりかえって彼が食いついてくるのを待つだけ。
そしたらやっぱりーーー
「うるせーな、毎回シツコイんだよ! なんなのオマエ!?」
あんまり我慢しない性格の加瀬くんが眉を吊り上げて後ろを振り向いてくる。
そう、これがたまらなく面白いらしいのだ。
高2になってから、私の毎日はこんなかんじ。
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