「なあ、んじゃアレは? 殿山の帰りに電車でさ・・」って加瀬くんの親指が私の唇をなぞる。
ムチャクチャ恥ずかしいけど、もう逃げるのはやめた。
「あのままキスしたら、オマエ逃げてた?」
「んーん。たぶん逃げてない」
加瀬くんが目を見開く。
「オ、オレ、もしかしてあん時キスできたの!?」
「そうかも・・だって、加瀬くんにされてイヤなことなんかナイんだもん」
「!!!」

勢いよく肩を引き寄せられて、ごっちん、ておでこ同士がぶつかった。
「いったあ。なに!?」
「アレ、今からやり直す!」
そう言うなり顔をぐぐぐと傾けはじめる加瀬くんに私は肝が冷えた。
その唇をとっさに手で覆う。
「うそ、ヤだ、ストップ!! なんでそんなに勢いまかせなの!? チョットは周りを気にしてよ! 人がいないかちゃんと見て!」
「オマエこそなんでそやっていちいち雰囲気ブチ壊すの!? オレはムード重視なの!」
プリプリ怒りながらも、加瀬くんはキョロキョロとまわりを見回して、
「まあ今はチョット・・ダメかもね・・」
って渋々キスを諦めた。