加瀬くんが腕の中に私を閉じ込めて、スリスリと優しい頬ずりを繰り返す。
「小宮山あ、ホントにスゲー好き・・」
「か、加瀬くん、すんごい嬉しいんだけどさ。今はもうダメ、もう危険!!」
ガッチリとおさえこまれた胸の中からムリヤリ首を伸ばして、少し向こうに見えていたベビーカーのお母さんと小さな男の子の姿を探した。

うん、いるいる。コッチにどんどん近づいてきてる。

何度も言うがここは公園である。常に好き放題なんでもできるってわけじゃない。
んだけど上の空の加瀬くんはそんなこと全く気にしない。

「誰も見てねえって。なあ、もうチョット・・」
「ダメダメ、長いっ。もーマズイ!!」

構わず手を伸ばしてくる加瀬くんに、私だけが慌てふためく。
人目に怯えて胸を押すと、加瀬くんは私のほっぺにひとつ、ちゅ、ってキスを落としてから名残惜しそうに身体を離した。

「う、嘘、今キスした!?」
「いいじゃん、ちょっとくらい。オマエ騒ぎすぎ」
「いやいや、加瀬くんがズ太すぎんでしょうよ・・」

改めて思う。私とはメンタルの作りがだいぶ違うって。

「先に言っとくけど、オレあんまりガマンできそーにねえよ?」
「・・それは知ってる気がする。ナントナク・・」

ここ最近の、加瀬くんの数々の所業が頭をよぎる。
つきあう前からあーだもんね。そりゃムリかも。

けどさ。それにしても、だ。

「も少しゆっくりにしてよ。私、ビビリだからあんまりガンガン進めない」
こんな牽制が加瀬くんにどんだけ効果があるかはわからない。だけど、私がそう言うと、加瀬くんは一応、努力するって言ってくれはした。