好きに決まってる。大好きだ。

「ウン」と小さく頷く私の腰をひきよせてギュッと抱くと、「小宮山全然顔に出してくれねーんだもん。そんなに前から好かれてたなんてわかんなかったわ」と言って彼はふてくされた。

「なあ、小宮山」

髪に顔をうずめるようにして加瀬くんが私の名前を呼ぶ。なあにと視線を送ってみても、その後に言葉は続かなかった。
すりすりと甘えるように繰り返されるやわらかな頬ずり。耳に頬に、彼の吐息が掠めてく。
全身が泡立つような甘い痺れに襲われてぐらりと頭がのけぞった。背筋が寒くなるほどのその衝撃に思わず目をつむる。

ああダメ。こんなの、倒れそうーーー

自分でも思う。よくあんな平気な顔していられたなって。
チョット触られただけで気絶しそうになる今の私を、あの頃の自分に見せてやりたい。
色々いっぱいガマンして、私は必死で彼の胸にしがみついた。

「へへへ。だけど今じゃ『スキ』が丸わかり・・これってオレにドキドキしてんだよね?」

ご機嫌の加瀬くんがあっちへこっちへと手を伸ばす。
頭を撫でて、髪をさわって。ほっぺだとか鼻の頭だとか、思いつくままいろんなところに。
その度にぎくりぎくりと硬直してはドキドキと胸を鳴らして息をつめる私を、加瀬くんはそれはそれは満足そうにたっぷりと楽しんだ。

「あーやべえ。気分良すぎてやめらんない」
「遊ばないでよ、息が止まる!」
ところが。機嫌よく遊んでいた手を止めて、加瀬くんが切なげにため息をつくのだ。
「んでもこんなの今だけだよな? すぐに慣れちゃうだろ?」なんて言って。

私は彼の言葉に首をかしげた。

「そんなわけないよ。ずうっとこうだよ・・」

そんな簡単に慣れたりしない。きっとずうっとドキドキする。
だってもう身体が覚えてしまった。加瀬くんに触れられるたびに背筋を突き抜けてゆく、息が止まりそうになるほどの甘い痺れを。それを私に教えて刷り込んだのは加瀬くんじゃないか。

胸の中でそうつぶやいてチラリと目線を上にあげると、その先で、加瀬くんが何かを思い出したかのように「あ」って小さくつぶやいた。

「それはそうと。おまえ、オレに何か言うことあったよね?」
「言うこと?? なんだろ、なにかあったっけ・・?」

「好きって言ってよ。オレまだちゃんと聞いてねえ」

「!!!」